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転職する気がなくても書いてみてほしい|職務経歴書が教えてくれた“自分の強み”

転職する気がなくても書いてみてほしい|職務経歴書が教えてくれた“自分の強み”

夜、最終電車の窓に映る自分の顔が、少し疲れて見えました。
「自分には大した実績なんてない」——その言葉が、帰り道の心の中で何度もリフレインしていたのを覚えています。

転職したいわけじゃない。けれど、このまま同じ毎日を繰り返していいのかと問われると、胸の奥がざらりとする。
そんなある日、私はふと、職務経歴書を“試しに書いてみる”ことにしました。
最初は白い画面を前にして、手が止まったまま。「何も書けない」。でも、“成果”ではなく“過程”から書き始めてみたら、少しずつ言葉が出てきたんです。

書くという行為は、思考を外に出す作業です。
心理学でも、感情や経験を言語化することでストレスが軽減し、自己理解が深まると言われています。
キャリア理論の世界でも、“リフレクション(振り返り)”は自分の価値観や強みを見直す重要なプロセスとされています。

この記事では、私が職務経歴書を書きながら「自分の価値」を再発見していった過程を、できるだけリアルにお伝えします。

この記事でわかること
  • 「何も書けない」状態から、言葉を出し始めるコツ
  • 書くことで見えてきた“意外な強み”
  • 整理された思考とともに、自信が戻ってきた理由

大切なのは、完璧に書くことではなく、“いまの自分”を言葉にしてみること。
たとえ一行でも構いません。その一行が、あなたの中の止まっていた歯車を動かし始めます。
さあ、最初のページを一緒に開いていきましょう。

「書けない」から始まった、私の職務経歴書づくり

夜、パソコンの前に座って「さあ書こう」と決めたのに、最初の1行が出てこない。
私もそのとき、「こんなに何も思い出せないものなのか」と愕然としました。
画面の前で腕を組み、コーヒーの湯気だけが静かに立ちのぼる——そんな時間が1時間近く続いたのを覚えています。

でも今振り返ると、「書けない」という感覚こそが、自己理解のスタート地点でした。
職務経歴書は“実績を並べる書類”ではなく、“自分の仕事を言語化する鏡”だったんです。

白紙の画面を前に、「自分には何もない」と思った初日

最初の1時間、画面は真っ白なままでした。
肩書きを打とうとしては手が止まり、職務内容を思い出そうとしても、頭の中が真っ白になる。
「自分は何もしてこなかったのでは?」——その不安が、カーソルの点滅と一緒に胸の奥でリズムを刻んでいました。

でも、そこで視点を変えました。“結果”ではなく、“場面”を思い出してみる。

——忙しい月末、上司から突然「この集計、やり直して」と言われたあの日。
——顧客から仕様変更の相談が入った夜、残って対応した自分。
——新人がミスをして落ち込んでいたとき、フォローしながら自分の作業が深夜にずれ込んだ日。

そうした“場面”を書き出していくうちに、少しずつ言葉が出てきました。
「いつ・どこで・誰と・何を・なぜ・どうしたか」。
結果がすごくなくても、当時の判断や動きを書くことで、自分の中に眠っていた仕事の記憶がページを埋めていったのです。

“成果がない日々”にも価値があると気づいた瞬間

「売上を◯%伸ばした」「プロジェクトを成功に導いた」——そんな華やかな成果が浮かばないと、手が止まってしまう。私もそうでした。

でも、ふと気づいたんです。“プロセス”は誰の中にもある。

たとえば——

  • 期限が厳しい案件で、タスクを分解し、関係者に早めに声をかけておいた。
  • クレームを受けたとき、まず事実確認のログを残し、感情的にならないよう型を使った。
  • 会議が迷走しかけたとき、決定事項・保留事項・ToDoの3点で議事を締めた。

どれも特別ではない。でも、そこに再現可能な行動がある。
それこそが、自分の“仕事の型”であり、価値の証なんだと気づきました。

つまり、最初のハードルは“すごい実績を書くこと”ではなく、
“自分の行動を、できるだけ具体的に並べること”だったのです。

ポイントまとめ
  • 最初は白紙でOK。まず“場面”を思い出す。
  • 結果より過程。行動・判断・工夫を書き出す。
  • 5W1Hで事実を並べると、言葉が出やすくなる。

書き出して初めて気づいた、“自分らしさ”という強み

最初は「何も書けない」状態から始まった職務経歴書づくり。
けれど、いくつかのエピソードを並べていくうちに、思いがけない自分の“仕事の癖”や“強み”が浮かび上がってきました。

それは、誰かに評価された成果ではなく、日々の“なんとか乗り切った瞬間”の積み重ね。
「地味だけど、自分らしい仕事の形」が、少しずつ見えてきたんです。

上司の無茶ぶりを“回避せずに動いた”経験が強みに変わった

書き進めるうちに、「あの時も何とかした」「あの場面でも踏ん張った」というエピソードが出てきました。
たとえば、直前で方針が変わった資料づくり。私は骨子だけ先に合意を取る進め方に切り替え、手戻りを最小化しました。これは地味ですが、確かな再現性のある強みです。

無茶振りは“受け身の被害”ではありません。
制約条件下での意思決定と再設計という、立派なスキルの証拠。
職務経歴書では、「どんな制約の中で」「どう判断し」「どう結果を出したか」を短く書くだけで、行動の質が伝わります。

「できなかったこと」より、「やりきった経験」に光を当てる

振り返ると、「完璧ではなかったけど最後まで届けた仕事」がいくつもありました。
そこで視点を、“できなかった点の反省”から“やりきった点の再評価”へ切り替えました。

  • 期限内に間に合わせるため、優先度の低い要件を外し、必須に集中した。
  • 担当外のトラブルでも、一次受けの導線を作って混乱を抑えた。
  • 後続のメンバー向けに、再発防止のチェックリストを共有した。

書いて初めて気づいたのは、私の仕事は「状況を整えること」に価値があるということ。
役割名ではなく、“機能(何を可能にしたか)”で見ると、強みが輪郭を持ち始めます。

ポイントまとめ
  • 無茶振り対応=制約下の意思決定というスキル。
  • 「何を可能にしたか」で自分の機能を言語化。
  • 反省より“やりきった点”にフォーカスすると強みが見える。

書くことで、バラバラだったキャリアが“ひとつの物語”になった

職務経歴書を書きながら感じたのは、「書くことは、頭の中の地図を描き直す行為」だということです。
これまで点でしか覚えていなかった経験が、線でつながり、物語になっていく。
それは単なる職歴の整理ではなく、「自分の成長をもう一度見つめ直す時間」でした。

書きながら、「あの経験には意味があったのかもしれない」と思える瞬間が、何度も訪れたんです。

過去の点が線になる瞬間、“自分の成長”が見えてきた

断片的な経験が、時系列で並ぶと意味が変わります。
新人期は泥臭い実務、次第に調整役、いまは小さなリーダー役。
振り返ってみると、私のキャリアは、「現場の混乱を整える人」から「チームの流れを整える人」へと移っていました。

経歴書のサマリーには、こう書きました。

「制約条件下での再設計・段取り・関係者調整を強みとし、乱れた状況を“進む状態”に整える人」

この一文を書いた瞬間、胸の中で“何かが定まる感覚”がありました。
「私は何者か?」という問いに、仮の答えでも言葉を持てたことで、目の前の仕事への視点が揃い、迷いが減ったんです。

過去の失敗にも、“自分を支える意味”があったと気づく

書き出していくうちに、以前は「失敗」と思っていた案件にも、学びの核があると分かりました。
上手く回らなかったのは力量不足だけではなく、前提共有が曖昧だったから。
次からは、最初に目的・制約・決定者を確認する“型”を入れた——それも立派な成果です。

こうして、少しずつ自己効力感(自分はできるという感覚)が戻ってきました。
大きなトロフィーはない。でも、再現できる行動の型ならいくつも持っている。
職務経歴書に並んだ一行一行が、その証拠になりました。

ポイントまとめ
  • 時系列で整理すると、キャリアの意味が変わる。
  • 一文の自己定義(サマリー)が、軸を作る。
  • 失敗も「次に活かせる型」に変換すれば成果になる。

まとめ|職務経歴書は“転職のため”じゃなく、“自分を整えるため”のツール

書き終えて気づいたのは、職務経歴書は「転職準備」だけのものではないということです。
むしろ、自分の現在地を見直し、これからの選択を冷静に考えるための“メンテナンスツール”でした。

書くことで、頭の中のもやが晴れていく。
それはキャリアの棚卸しであり、同時に自分の思考を整えるセルフメンテナンスでもあります。

現職でも使える、“日々を振り返るための棚卸しツール”

経歴書を作ってから、日常のメモが変わりました。
会議後に「何を可能にしたか」を1行で記録する。
月末に「再現したい型」を1つだけまとめる。

それだけで、次の評価面談の準備がほぼ終わっている状態になります。
転職する・しないに関わらず、棚卸しは現職でのパフォーマンス改善に直結します。

小さな振り返りが、未来の自信の種になる。
これは、実際に書いた人にしか味わえない実感だと思います。

一度作っておくと、“焦らず選べる自分”になれる

職務経歴書は、私にとって“心の保険証”のような存在になりました。
作っておくだけで、心に余裕が生まれる。
将来が不安になった夜や、仕事で行き詰まった朝でも、
手元にある“自分の証拠”を見返すだけで、少し冷静になれるんです。

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参考資料(出典)
区分出典名概要URL
キャリア理論キャリアコンサルティング協議会「キャリアコンサルタント養成講座テキスト」リフレクション(内省)やキャリア棚卸しの重要性を解説。https://www.careerconsulting.or.jp/
心理学Pennebaker, J. (1986). Writing about Emotional Experiences as a Therapeutic Process.感情や経験の筆記がストレス軽減・自己理解促進につながることを実証。https://psycnet.apa.org/record/1986-21983-001
キャリア支援論シャイン, E. H.『キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を見つけ出す』白桃書房「キャリア・アンカー」概念を通じ、自己価値観と職務選択の関係を説明。https://www.hakutou.co.jp/
実践・一次情報note:「職務経歴書を書いたら自分の経歴に少し自信が持てた話」実際に経歴書作成を通じて自己効力感が高まったという体験談。https://note.com/
行動科学リクルートエージェント公式コラム「キャリアの棚卸しのやり方と活かし方」経験・スキルの整理が自己理解と転職準備につながる過程を解説。https://www.r-agent.com/
自己分析ツール厚生労働省「ジョブ・カード」公式サイト自己理解支援のための自己診断・職務経歴整理ツールを提供。https://jobcard.mhlw.go.jp/
キャリア実務Indeedキャリアガイド「モヤモヤの正体を言葉にする『書く習慣』」書くことで感情や思考を整理し、ストレス軽減につながる効果を紹介。https://jp.indeed.com/
実践Tipsアゲルキャリア「成果が少ない人の職務経歴書の書き方」実績が少なくてもプロセス重視でアピールできる工夫を紹介。https://ageru-career.com/
自己理解補助Somali「強みを見つける職務経歴書の書き方」スキルの言語化による自信回復と行動意欲向上を解説。https://somali.jp/

職務経歴書で“自分の棚卸し”ができたら、次はキャリアの備え方を見直す番です。
「今すぐ辞めない人」のための安心な転職準備とは?

「とりあえず転職活動」といっても、動機やきっかけは人それぞれ。
迷いながらでも、一歩を踏み出すヒントをまとめています。
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