- 振り返りはしているものの、なんかうまくいかない
- 振り返りにKPTを使っても、意見出しで終わっていて行動につながっていない
- 上司はKPTで振り返りを行ったことに満足してしまっている
- KPTで意見をたくさん出しても、結局どうしていいかわからず行動につながっていない
この記事は、このようなモヤモヤを感じている方に向けて書いています。
チームで動いた案件やプロジェクトが終わった後などに
「振り返り」を行うことも多いと思います。
正しい振り返りは、次の行動へとつながり、仕事の成果を生み出しますが
誤った振り返りは、次の行動につながらず、仕事の成果になりません。
あなたの会社に
振り返りの上手な上司はいますか?
いませんね。そんな上司は。
ほとんどの上司は
- 振り返りをすることが目的になっている
- 振り返りでたくさん意見が出たことで満足している
- そんな振り返りのしかたも非常にヘタクソだ
- そもそも部下と一緒に振り返りをしようとしない
上記のとおり。
仕事のしかたを教えてくれる(教えられる)上司も少ないでしょうし
お手本になるような上司もいないのが現実ではないでしょうか。
――ということで
ここでは
- 振り返りの目的(なぜ振り返りを行うのか)
- 振り返りの進め方(どうやってやるのか)
- 振り返りの注意点(コツや陥りやすいことなど)
を解説していきます。
振り返りを行う目的を明確にして
正しい振り返りの進め方を理解することで
あなたやチームでやってきたことが
今まで以上に仕事の成果につながっていくはずです。
ちなみに
しばらく「振り返り」という単語を使いますが、「KPT」とほぼ同義と思ってもらって大丈夫です。
詳しくは後述で説明いたします。
あと、N(ノリ)、I(勢い)とか
昭和の上司は思考停止しちゃってますよね。ね?
なぜ振り返りをするのか
そもそも、なぜ「振り返り」をするのか
ブレないように「振り返りをする目的」を明確にしておいたほうがよいです。
これはけっこう大事です。
振り返りの意味は下記のとおりです。
過去の物事を顧みる、思い起こすこと。 回顧すること。
つまり、「過去から学ぶ」ということです。
行ったことの良し悪しを評価して、次回以降に活かすためです。
そうすることで、行ってきたことをより成果につながるようにしていきます。
具体的には
- 良かったこと→継続することで質の担保ができる
- 悪かったこと→やり方を変える、または止めることで、質の向上につながる
- 新たな気付き→新たに試すことで、さらに質の向上につながる可能性あり
こんなかんじです。
ここががブレると、振り返りすることが目的になる「手段の目的化」が起こってしまいます。
そうなると、振り返りを行っても意見出しで終わり、行動につながらないことが多いです。
振り返りで最も重要なこと
振り返りをすることも重要なのですが
けっこう盲点になっていることがあります。
それは――
誰が、何のために、どんな、振り返りを行うのか
ということです。
具体的には
- 誰が…振り返りの主管となる人のこと。振り返りの内容を次につなげる人。上司とは限らない。
- 何のために…「次に活かすため」の「活かす先」のこと。
- どんな…①と②を踏まえて、どんな意見がほしいのかということ。
こんなかんじです。
もうすこし詳しく説明します。
① 誰が
「①誰が」で振り返りの主管となる人は、プロジェクトリーダーなどの、実働部隊を率いたリーダーが望ましいです。
主管の人が、振り返りの進行を買って出るのがベターです。
主管となる人が、振り返りの内容を次につなげる役割を担います。
何もしていない上司が進行だったり、主管があいまいだと
振り返りの質も低くなりますし、せっかくの振り返りの内容も実行されなかったりしますのでご注意ください。
② 何のために
「②何のために」は、「次に活かすため」の「次」を明確にしておきます。
例えば、次回が既に予定されているイベント等であれば、その「次回」になりますし
次回がない類の案件であれば、似たような案件などでしょうか。
つまり、「活かす先」のイメージを明確に持っておいたほうがよいです。
活かす先のイメージが明確でないと、振り返りの内容が意味をなさなくなります。
単発の案件など、活かす先がまったくイメージできないものであれば、「振り返りをしない」というのもありです。
振り返りをする目的に沿わない「振り返り」は、やる意味がありません。
なかには「やらないより、やったほうがいい」という、思考停止の上司もいます。
そんなときは
心の中で
と思って、ムダな時間につきあってあげましょう。
思考停止の上司には何を言ってもムダですので。
③ どんな
「③どんな」は、振り返りでどんな意見がほしいのかイメージしておくことです。
気付いたこと、思ったことなど、フリーテーマで意見を出し合うと非効率だったりするので
「主管の人」が「次の活かす先」に必要な情報が集まるように、ある程度テーマを決めてしまうことをお勧めします。
例えば
- チーム目線なのか個人目線なのか決めておく
- 事実ベースのことに絞って「感じた」「気がした」などの感想ベースは避ける
などでしょうか。
「①誰が」と「②何のために」は、意味のある振り返りにするために絶対にやったほうがいいことで、「③どんな」は効率化のためのおまけというかんじです。
KPT(ケプト)法とは
振り返りの方法の代表的なものが「KPT(ケプト)」です。
(フレームワークやツールとも呼ばれています)
PDCAサイクルでいうところの
C(Check):検証
A(Action):改善
を、本記事での「振り返り」と呼んでいる範囲として
「KPT」は、その振り返りの「ツール」という位置づけとしています。
K:Keep= 良かったこと、続けたいこと
P:Problem= 悪かったこと、改善したいこと
T:Try= 改善していくこと、次に活かすこと
これらの頭文字をとってKPT(ケプト)と呼ばれています。
振り返りをする順番は下記のとおりです。
①「K:Keep」について意見出しをする
②「P:Problem」について意見出しをする
③「①」と「②」で集まった意見をもとに、「T:Try」を検討する。
具体的な進め方については後述の「KPTの基本的な進め方」で解説します。
KPTのメリット
振り返りに「KPT」を用いることのメリットとしては
- 問題点が可視化でき、現状把握がしやすくなる
- 参加者がの認識をすり合わせることができる
- KPTの項目に沿って意見出しをすることで、個人対個人の意見のぶつかり合いなどがなくなる
- 普段はあまり意見を出さないメンバーでも意見を出しやすくなる(意見を聞きだしやすくなる)
こんなかんじです。
逆に、気付いたことや思ったことをフリーテーマで意見出しを行うと
- 何について意見を出しているのか論点が不明確になる
- 論点が不明確なので、参加者の認識合わせにならない
- 互いに思ったことを発言するので、意見の対立に発展することもしばしば起こる
- 意見を言う人が限られてくる。
- 挙がった意見をまとめきれず、意見出しで終わってしまう
このようなことが起こりがちです。
みたいな聞き方しかできない上司もいますよね
KPTの基本的な進め方
①「K:Keep」
↓
②「P:Problem」
↓
③「T:Try」
の順番に意見出しを行っていきます。
①「K:Keep」について意見出しをする
「Keep」では
・良かったこと
・続けたいこと
・伸長(強化)させたいこと
などについての意見を出し合います。
具体的には下記のとおり。
-
良かったこと
成功したこと、上手くいったこと、手ごたえを感じたこと、喜んでもらえたこと、など -
続けたいこと
引き続き実施すること、今後もやったほうがいいこと、など -
伸長(強化)させたいこと
やり方をアレンジすることでより効率化できそうなこと、など
- 仕事の成果を分かち合う
プラスやポジティブな内容になるので、意見が言いやすい項目かと思います。
仕事は失敗やできていないことの会話になりがちなので、「良かったことは、良かった」と、自分たちの仕事の成果を分かち合うことも大切だと思います。
②「P:Problem」について意見出しをする
「Problem」では
・悪かったこと
・改善したいこと
などについての意見を出し合います。
具体的には下記のとおり。
-
悪かったこと
目的に沿わなかったこと、目標に達しなかったこと、トラブルが起きたこと、否定的な意見が挙がったこと、非効率だったこと、など -
改善したいこと
やり方を変えたほうがいいこと、やめたほうがいいこと、など
- 改善や解決に目を向けて、責任追及をしないこと
真摯な態度で自己の反省点を挙げてくれる人もいれば、他人事のような人もいます。
いずれにせよ、問題の改善や解決につなげることを目的としていますので、責任追及や個人攻撃にならないようにしましょう。
③「T:Try」を検討する
「Try」では
・改善していくこと
・次に活かすこと
などについて
「Keep」と「Problem」で挙がった意見をもとにして検討していきます。
具体的には
-
「Keep」からくること
「継続」や「伸長・強化」すること -
「Problem」からくること
「改善する(やり方を変える)こと」や「やめること」
このように
2つの性質があります。
図解で表すと次のとおりです。
便宜上
「Keep」からくるものを『Try(Keep)』
「Problem」からくるものを『Try(Problem)』
と呼んでいます。
あとは
「Keep」からも「Problem」からでもない
新しいアイディアも出てくることがあると思います。
「後で気付いたけど、あれを先にやっておけばよかった」みたいなことなどです。
やってみてわかったことや、やっているうちに思いついたことなど
新たな気付きを次に活かすことも大切なことです。
なので
もう1つの性質として『Try(New)』があります。
図解で表すと最終的に次のようになります。
KPTをやっていると
「Try」がごちゃごちゃになって整理できなくなることがよくあります。
原因は2つ。
- 前述の『Tryの3つの性質』を理解せずにKPTをしている
- 「次に挑戦すること」や「次回試してみたいこと」という解釈から、『思い付き』や『希望』など、現実的ではないことも発言している
そのため、「Try」の段階で何がなんだかわからなくなり
結局何をしたらいいのかわらず、次の行動につながらない――
そんなKPTをたくさん見てきました。
前述の『Tryの3つの性質』を理解しておくことで
「Try」を考えやすくなると思いますので、ぜひここは押さえておいてください。
- 『Tryの3つの性質』を理解しておく
前述のとおり。 - 自分たちで実行不可能な改善策や意見を言わない
実行できない改善策を立てても改善にはつながらないため、振り返りをする意味がない。 - 精神論や抽象的な意見を言わない
「しっかり~する、~を意識する、~気をつける」などの抽象的な内容だと、具体的な行動につながらず、改善にもならない。
④ 「Try」のもう1段階先の「Action」
「KPT」と言いつつ、4つ目の「Action」も紹介します。
「KPT」までだと、具体的なアクションまで落とし込まれず、意見出しで終わってしまうことが往々にしてあります。
そこで、もう1段階先の「Action」まで決めてしまえるのがベターなわけです。
「Action」を含めて、「KPTA」と呼ばれていたり
「Action」を「To Do」と呼んで、「KPTT」というのもあるようです。
図解で表すと次のようになります。
「KPT」だと、『意見出し(ブレスト)』感も強かったりします。
- 「Keep」、「Problem」、「Try」→『案』の段階
- 「Action」→『決定事項』とする
上記のとおり。
図解だとこんなかんじです↓
KPT(KPTA)の基本的な進め方は以上になります。
「Try」がわりと鬼門になったりしますが、『3つの性質』を理解しておけば大丈夫です。
図解もぜひ活用してください。
KPTの注意点:陥りやすいこと
「KPT」で陥りやすいこと(KPTあるある)をご紹介します。
- KPTが意見出しで終わっている
- KPTで意見出しをした後に、どう進めていいかわからず行動に移せない
- KPTをやったこと自体に満足感を得てしまう
- KPTをやることが目的になっている
- 改善案は出るものの実行されない
- 意見が多すぎて、結局何をすればいいのか整理ができない
- 誰が何のためにやるKPTなのか不明で、参加者全員が他人事だ
だいたいこんなかんじです。
いっとき私のいる会社でも「KPT」が流行ったのですが、実際は上記のとおりでした。
ホント流行っただけでしたね。
思考停止の上司って
本質が理解できず、表面上のことしかわからないから
カタチだけ流行らせますよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「KPT」はシンプルな手法とみせかけて
実際のところ、機能させるのはけっこう大変だなと感じています。
やり方そのものは難しくないと思いますので
- 誰が何のためにどんなKPTをしたいのか明確にしておく
- 『Tryの3つの性質』を理解しておく
- そして『Action』まで決めて実行に移す
この3つを押さえておけば大丈夫です。
KPTを活用して、成果につながる振り返りにしていきましょう。
KPTに参加する側のときに、上司や先輩に進言するのは難しいと思いますので
まずは、KPTを開催する側のときに試してみるでよいと思います。
小さく少しずつ進めていきましょう。
そういえば昔、KPT流行ってたわー