- 手段の目的化ってどういうこと?
- 上司がよく手段の目的化に陥っている
- だいたいの業務は手段の目的化だと感じている
このような疑問にお答えします。
本記事の内容
- 手段の目的化とは何かを解説します
- 手段の目的化が起こる原因について解説します
- 手段の目的化が起こす影響について解説します
- 手段の目的化への対策を解説します
日頃、何かに取り組んでいると
何のためにするのか(目的)より、どのようにするのか(手段)に重きを置きがちになるものなのですね。
『手段の目的化』というワードがあるくらい、目的と手段は混同しやすいのです。
なので、上司が「それって手段が目的化してるよね」とか言ってきたら、たぶんわかってないで使ってますよ?
今回はそんな『手段の目的化』について解説してきます。
手段の目的化とは
辞書だとこういう意味です↓
手段の目的化
ある目的を実現するために採用した行動やその方法が、本来の(目的を実現するという)意義を逸脱して、行動する事それ自体を目的として行動するようになってしまうことを指す表現。形骸化に伴って生じやすい。
※weblio辞書
もうすこし簡単に言うとこんなかんじでしょうか↓
- 「手段」自体が「目的」になってしまうこと。
- 「目的」を見失い、「手段」にばかり目がいってしまうこと。
- 「手段」だけが残っていて「形骸化」していること。
『手段の目的化』も、上記のようにざっくり3種類の系統に分かれると思うのですね。
ではそれぞれ詳しく見ていきましょう。
手段の目的化のよくある例
さきほどの3種類の系統をビジネスシーンのよくある例で考えてみたいと思います。
①「手段」自体が「目的」になっている
これは「会議」でイメージしてもらえるとわかりやすいかもです。
会議って「意味がない」とか「時間のムダ」とかよく言われるじゃないですか?
それって
- 会議をすることが目的になっている
- 集まることが目的になっている
- 話し合うことが目的になっている
こんな会議が多いからなんですね。
「何のための会議なんでしたっけ?」ってなる目的がわからない会議は、たいてい会議をすること自体が目的になってしまっています。
会議って本来は「何かを決めるため」の手段のはずなんですよね。
このように、手段そのものが目的になっていることがあるのですね。
議論したことに満足しちゃってる上司とかいるじゃないですか?
あたまだいじょうぶなのか心配になりますよね?
②「目的」を見失い、「手段」にばかり目がいっている
これは「施策」とかかなと思います。
施策って、会社のなかで上司から降ってくる業務のことだと思ってください。
「あれやれ、これやれ」と来るやつです。
たとえばこんな会社がありましたよ↓
「目標は100万ダウンロードだ」
「どうやってダウンロード増やす?」
「もっと販促が必要なんじゃないか」
「積極的に勧誘していかないと」
「店頭告知は徹底できているのか」
「何のために100万ダウンロードを目指すんですか?」
「え?」
「え?」
このように、「何のために」の部分がきちんと伝わってなくて、「どうするか」だけになってしまっていることがあるのですね。
基本的に会社は上意下達ですから、目的よりも手段が『指示』として伝達されることのほうが多いと思います。
そのため、指示どおりに業務をこなすことが仕事になってしまうのですね。
③「手段」だけが残っていて「形骸化」している
これは『ルーチンワーク』に多いかもです。
たとえば
- 誰も見ていないようなレポートの作成
- 何をするわけでもない朝礼
- とりあえずメールは全員に同報する部内ルール
みたいな
「これって何か意味あるの? なくてもいんじゃない?」って思うようなことです。
わりと『手段の目的化』は日常に潜んでいる
どうでしょう? あなたの日々の業務のなかで思い浮かんだことはありますか?
意図的に手段を目的とチェンジするなんてことはなく、知らず知らずのうちに手段が目的になってしまっていることのほうがほとんどです。
なので、とっても気付きにくいのですね。
ちょっと意識して日常を観察してみると、「あれもじゃん、これもじゃん」と見つかるかもしれませんね。
手段の目的化が起こる原因
では、なんで『手段の目的化』が起こるのか?
これは大きく3つの原因が考えられます。
- 本来の目的を知らない(知らされていない)
- 本来の目的を忘れている
- そもそも目的よりも手段の実行ありきになっている
では、詳しくみていきましょう。
① 本来の目的を知らない(知らされていない)
会社というものは基本的に上意下達です。
なので、上司から決定事項や作業指示はおりてきても、決定にいたった経緯や目的の部分についての説明はほとんどありません。(上司さえ目的を正確に理解していないことさえありますよ?)
指示を受けたほうも、指示どおりに業務をこなすことが目的になってしまいがちです。
これは、日本企業の多くがメンバーシップ型の雇用をしているのが原因なんですね。
逆に欧米企業や外資系企業はジョブ型といわれています。
ざっくり説明すると下記のとおりです↓(ざっくりですよ?)
- メンバーシップ型
人に仕事をあてる。
「人がいるから、人に仕事をあたえる」という考え方。
そのため作業指示になりがち。 - ジョブ型
仕事に人をあてる。
「必要な仕事があるから、その仕事に対して人をあてる」という考え方。
そのため仕事の目的(何のための仕事なのか)を重要視する。
そもそもメンバーシップ型の雇用は目的よりも手段になりやすい
「人に仕事をあてる」という考え方のため、「何のための仕事なのか」よりも「何をするのか、どうやるのか」になってしまいやすいのですね。
② 本来の目的を忘れている
習慣化してしまっている業務やルーチンワークに多いです。
入社や配属されたときに教わったもの、前任者から引き継いだものなど、自らルーチン化したものというより、もとからルーチン化されていたものは「目的」が忘れ去られていることがほとんどです。
「どうやってそれをやるのか」という効率をよくすることは考えても「なぜそれをやるのか」という目的について考えることは、そんなにないのではないでしょうか。
たとえば、会議で使用する資料の印刷とか。
印刷のしかたや配布のしかたなどを工夫するかもしれませんが、何のために資料を印刷する必要があるのかを考えたら、そもそも「印刷することをやめる」ことも可能かもしれません。そんなかんじのことです。
これもメンバーシップ型が起因しています。
メンバーシップ型では、あたえられた業務をこなすことが仕事になります。
たとえ「これなんの意味があるの?」って思うことでも仕事としてやることが普通のことなのですね。
教わったことを教わったとおりにやることとか。
「仕事することが仕事」みたいな変なかんじですね。
③ そもそも目的よりも手段の実行ありきになっている
「とくにかくやるんだー」みたいになっちゃってる会社の施策とかですかね。
もはや「何のために」とか取り付く島もなく、言われたことをやるしか選択肢がないという状況はサラリーマンであれば日常茶飯事ではないでしょうか。
手段の目的化が起こることでの影響
『手段』が『目的』になったとしても、きちんと実行されたり、やり遂げる分には別にいいのでは? という意見もあると思うんですね。
ここでは「なぜだめなのか」ということではなく、手段の目的化が起こると「こういうことがありますよ」ということを紹介したいと思います。
全部で3つです。
① 本質的な解決にいたらない
決めた手段を実行しても目的につながらなかったり、期待した効果が発現しないということもあります。
何がしたかったのかわからないことが多い
たとえば、さきほどの「会員アプリ100万ダウンロード」を例にとると↓
- 100万ダウンロードを達成したけど、何がどう変わったのかわからない
- この後どうしていくのかわからない
- そもそも何のために「100万ダウンロード」を目指したのかわからない
こんなかんじです。
目的(目的化した手段)を達成しても「?」がのこるようなことってありませんか? それです。
だいたい新たな問題が発生する
本質的な解決にいたらないばかりか、そのせいで新たな問題が発生することがあります。
さきほどの会員アプリの例だと↓
- アプリのレビュー評価がよくない
- 100万ダウンロードはしたけど、アクティブユーザーが少ない
- クーポン機能はあるのに、クーポンが配信されていない
こんなかんじです。
やっぱり「そもそも何がしたかったんでしたっけ?」となりがちなのですね。
② 軌道修正ができない
「何のために」がないと、決めた手段に固執してしまうので、状況に応じて目的達成のために手段を変えるというような判断もできなくなります。
仕事をしていて
- そうまでしてやる必要があるのか?
- 逆にもうやらないほうがいいんじゃないの?
みたいなことを感じることはありませんか?
うすうす気付いてるけど誰も言わないことってあるじゃないですか?
そういうのです。
ビジネスに失敗はつきものです。
上手くいなかったときに軌道修正できないのは致命的なのですね。
誰もがやる気をなくした状態で、言われた業務をただこなすだけになります。
③ 意味のない仕事に時間を使う
何のために必要なのか、誰の何の役に立っているのかはわからないけど、仕事だからやってます、というような業務ってあるじゃないですか?
手段が目的化して、業務すること自体が目的になると、そういった意味のなさそうな業務に時間を使うことになります。
意味のない仕事っていうのは、自分のためにならないと思うのですね。
「自分のためにならない」とはこういう意味です↓
- スキルアップにつながりにくい
- 自分の市場価値を高める経験になりづらい
これは人にもよります。
日本企業はメンバーシップ型の文化ですから「そういうものだ」とあまり疑問に感じない人もいるでしょうし、別になんら苦に思わない人もいると思います。
なかには意味のない仕事から意味を見いだしている人もいると思います。
たとえば、誰が見ているのかわからない定期レポートの作成でも、資料作成の練習・エクセルやパワーポイントの練習といった、自分のスキルアップに利用したりしている人もいると思うのですね。
なので、ここは人によりけりです。
ただ、仕事を任せる側になったとき、あなたの任せ方しだいでは「意味のない業務」にしてしまう可能性もあるということなのですね。
手段の目的化を防ぐには
結論からいうと、完全に防ぐのは無理です。
それくらい「手段の目的化」は誰もが陥りやすいんですね。
なので
- 目的を定める(未然に防ぐ)
- 目的に立ち返る(気付いて直す)
この2段構えで考えるのがよいと思います。
実行前に「何のため」なのか『目的』を定める。
実行途中で「これって何のためだっけ?」と『目的』に立ち返る。
これで防いでいきましょう。
さいごに、目的の定め方と立ち返り方を2つ紹介します。
なぜを5回繰り返す
トヨタのカイゼンで有名なあれです。
「それはなぜ?」→「それはなぜ?」・・・と5回繰り返して、思考を整理していく方法ですね。
ちゃんと5回繰り返せば、たいていはある程度の本質に行き着きます。
でも、ほとんどの人はそこまでやっていないものなのですね。
上司でやってる人なんてたぶんいないですよ?
Why so?で問う
こっちはロジカルシンキングで出てくる考え方です。
「本当にそうなの?」とか「なぜそうなの?」という意味で使われます。
なぜその手段なのか、なぜその目的なのか、その根拠を確認していくというかんじです。
精神論というよりは仕事のしかたです
どちらも「それはなぜ?」という『前提を疑う』ということが大事ということです。
手段が目的化していないように気を付けるとか、意識するとかだと精神論みたいになってしまいますが、ようは『考えるクセをつける』という仕事のしかたなのですね。
まとめ:結局は会社の風土によるかも
- 気を付けていても手段の目的化は起きやすい
- なので気付けるように『考えるクセをつける』ことが大事
- 手段の目的化がだめとは言わないが、よくない影響のほうが多い
- 手段に固執して軌道修正できなくなるのは致命的
- 手段の目的化はメンバーシップ型の雇用にけっこう起因していたりもする
手段の目的化は知らず知らずに起きていて、とっても気付きにくいものなのですね。
でも、「手段の目的化」に気付いて目的を的確にとらえることは、仕事を効率化したり、イノベーションのきっかけにつながると思うのですね。
「手段の目的化」をなくしていくことは、会社にとっていいはずなんでけど、それをよしとしない会社もあったりします。
すっかり大企業病に侵されている会社もあれば、官僚主義の上司もいるのですね。
あなたの会社はどうですか?
手段が目的化していることに気付いても、上司にむかって「Why so?」「Why so?」と連呼してはだめですよ?
あなたのサラリーマンライフのサバイブがクライシス化してしまうかもしれません。
話の通じない上司はどこにでもいるものです。ですが、しかたありません。それが会社のマネジメントなのですね。
会社や上司の考えを変えるのは難しいかもしれませんが、自分の守備範囲のなかだったり、自分の受け持つ案件であれば役立てることはできるのではないでしょうか。
ではでは
お疲れさまでした。
マウントとりに来たときだけだわー
マウントとりに来たときだけだわー
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